急性・慢性の呼吸器疾患を診療
呼吸器科は、肺や気管支、胸膜など、呼吸器の疾患を診療する科目です。
当院の呼吸器科では、風邪症候群、咽頭炎、扁桃炎、気管支炎、肺炎、気胸などの急性疾患から、気管支喘息、アレルギー性ぜんそく、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺がんなどの慢性疾患まで、様々な呼吸器疾患の診断と治療、および管理を行っております。
「せきが長引く」「痰が切れにくい」「動くと息切れがする」「胸に痛みが走る」といった症状のある方は、呼吸器疾患が隠れている可能性がありますので、早めに受診なさるよう、お勧めいたします。
他にも呼吸器のことで気になることがございましたら、何でも遠慮無くご相談ください。
次のような症状を診療します
- せき
- 痰
- 発熱
- くしゃみ
- 鼻みず
- 鼻づまり
- 喉の痛み
- 胸の痛み
- 息切れ
- 呼吸が苦しい
- 胸部の異常な陰影 など
当院の呼吸器科の主な診療内容
風邪症候群、インフルエンザ、咽頭炎、扁桃炎、気管支炎、気管支拡張症、肺炎、気管支ぜんそく、COPD、肺結核、気胸、アレルギー性鼻炎、花粉症など、一般の呼吸器内科で行われる診療に加え、下記のような診療を行っております。
- 気管支鏡検査(気管支内視鏡検査)
※必要に応じて連携医療機関にご紹介いたします。 - 肺がんの早期診断・早期治療
- 肺がんの術後管理や化学療法
- 気胸の診断、ドレナージ治療
呼吸器科で扱う代表的な症状・疾患
長引くせき
風邪症候群やインフルエンザなどの呼吸器感染症の場合、せきは通常、徐々に軽くなります。2~3週間すれば治まってきて、8週間(2ヶ月)以上も続くようなことは、そうはありません。
3週間以上続くせきを「遷延性のせき」、さらに長引くせきで8週間以上続いているせきを「慢性のせき」と言います。せきが長引けば長引くほど、感染症以外が原因となっている可能性が高くなります。
こうした場合に何が疑われるのかと言えば、可能性として高いのは、やはり呼吸器疾患です。呼吸器疾患はせき症状を呈することが多く、せきが8週間以上続いたら、アトピー咳嗽や喘息、せき喘息などが疑われますので、早めの受診をお勧めいたします。
気管支喘息
気管支喘息は、空気の通り道である気道に炎症が起きる疾患で、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という症状(喘鳴)が特徴的です。
気管支喘息の患者さんの気道は過敏になっており、アレルゲン(ダニやハウスダストなど)やウイルス、タバコや冷たい空気などによる刺激が加わると、気道は狭くなります。気道が狭くなると、せきが出たり、息苦しくなったりします。
治療としては、抗原回避(アレルギーの原因物質を排除する環境整備)をし、喘息治療薬を適切に用います。喘息の治療薬には、発作を予防するために定期的に使う長期管理薬(コントローラー)と、発作が起きた時に、その症状を鎮めるために頓服的に用いる発作治療薬(リリーバー)の2種類があります。リリーバーを使わなくても済む状態を目指して、コントローラーを上手に使って治していきます。
気管支炎
気管支とは、気管から肺に向けて左右に枝分かれした部分です。ウイルスなどの感染により、この気管支の粘膜に炎症が起こり、せきや痰などの症状のほか、時に発熱、食欲不振、全身倦怠感といった全身症状がみられる場合があります。これを一般に(急性)気管支炎と言います。風邪に併発することが多く、風邪による上気道の炎症が気管支へと波及することによって発症します。
肺炎でもせきや痰、発熱がみられますが、肺炎と違って、気管支炎では胸部X線写真上に肺の陰影が認められないので、この差によって見分けがつきます。
原因の多くはウイルスですから、根本的な治療薬はありません。このため治療としては、鎮咳薬や去痰薬、消炎鎮痛薬、解熱剤などによる対症療法が中心になります(インフルエンザの場合には抗ウイルス薬、細菌感染の場合は抗生剤が用いられることもあります)。
肺炎
肺炎とは、主に細菌やウイルスなどの病原微生物が肺に感染して炎症を起こす疾患です。呼吸器の防御機能が病原微生物を排除できなかった場合や、病気やストレスなどのために免疫力が落ちている時など、つまり感染力が防御力を上回った場合に、病原微生物が上気道から下気道、そして肺にまで入り込んで感染し、肺炎になってしまうのです。
がん、心臓病に続いて、肺炎は日本人の死亡原因の第3位を占めています(平成23年人口動態統計)。高齢者や慢性の病気を持っている方などは肺炎にかかりやすく、しかも治りにくい傾向がありますので、要注意です。予防や早めの治療が重要で、予防には「肺炎球菌ワクチン」の接種が有効です。
結核
結核は、その昔流行し、昭和25年までは日本の死亡原因の第1位を占めていました。しかし、適切な治療法が開発されて以来、患者数は一時期を除き、減少を続けています。
ただ、決して過去の病というわけではなく、現在も年間2万人以上の新たな患者が生まれ、年間2,000人以上の命が奪われています。結核は今でも、わが国の重大な感染症なのです(厚生労働省:平成24年結核登録者情報調査年報)。
結核は、結核菌が体内に入り増殖することによって発症する感染症で、初期症状は風邪に似ています。2週間以上にわたって、せきや痰、微熱が続くようなら、早めに専門の医療機関を受診しましょう。
気胸
修正)何らかの原因で肺の一部が破れて空気が漏れ、肺が空気に圧されて小さく縮んでしまった状態(虚脱)を気胸と言います。気胸のなかでも多いのが、肺に生じたブラ(嚢胞)に穴が開く特発性(理由がよくわからないこと)の気胸です(ほかには外傷による気胸や、女性の生理に伴う気胸などがあります)。気胸の好発年齢は10〜20代で、背が高くて痩せた男性に多く、また患者さんの約7割が喫煙者であることが特徴です。
気胸の症状は、突然の胸の痛み、乾いたせき、呼吸困難などです。胸部X線写真によって肺の虚脱が確認されれば診断がつきます。
気胸が軽度の場合は、時々胸部X線検査を行って経過観察をしながら自然治癒を待ちます。
中等度以上では、胸膜腔から空気を抜く処置をします。肋骨と肋骨の間から胸膜腔へ細いチューブ(ドレナージ)を差し込んで、漏れた空気を抜いてやります。こうした保存的治療で治らない重度の気胸、または再発を繰り返す気胸には、手術が必要です。手術では、原因であるブラを切除・縫縮します。従来は開胸手術が行われていましたが、現在では胸腔鏡手術(内視鏡を用いた手術)が主流となっています。必要時は連携病院を御紹介させていただきます。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
COPDは、タバコの煙などの有害なガスを長い年月にわたって吸い込むことによって、空気の通り道である気道(気管支)が狭くなったり、気道の先端にある肺胞(酸素と二酸化炭素の交換を行う組織)が壊れたりしてしまう疾患です。そのため、酸素を吸って二酸化炭素を排出する「ガス交換」の効率が悪くなり、息切れが起こるのです。
治療にあたっては、まず“禁煙”が重要になります。加えて、せきや息切れを軽くするために、効果が長く持続するタイプの気管支拡張薬を用います。
COPDが進行した場合には、薬物療法だけでなく、呼吸リハビリテーションや在宅酸素療法(機械を使って、自宅で酸素を吸入する治療)が必要になってきます。
肺がん
肺がんは、肺の気管や気管支、肺胞の一部の細胞が何らかの原因でがん化したものです。肺がんは進行するにつれて周囲の組織を破壊しながら増殖し、やがては血液やリンパ液の流れに乗って転移していくことが少なくありません。
肺がんの一般的な症状は、ほかの呼吸器疾患の症状と区別がつかないことが多いものです。そのため、なかなか治らないせき、血痰、胸痛、喘鳴、息切れ、声がれ、発熱などがみられる場合には、当院などの呼吸器科専門医への受診をお勧めします。喫煙歴のある40歳以上の方は、特に注意が必要です。精査・治療必要時は連携病院を御紹介させていただきます。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは、睡眠時に呼吸停止または低呼吸になる疾患のことで、肥満やのど・顎の骨格的な形状などが関与して、のどの空気の通り道が塞がることが主な原因です。
睡眠時無呼吸症候群は、その中等症以上を8年間放置すると死亡率が約37%(8年で100人中37人が死亡するということ)にもなるという報告があり、軽視すると怖い病気です。しかしきちんと治療すれば、健常人とほとんど生存率は変わらないと考えられています。
睡眠時無呼吸症候群の診断
睡眠時無呼吸症候群の診断は、まず問診で自覚症状や日頃の睡眠状況をお聞きすることから始まります。睡眠中や日中の気になる症状がありましたら、ご相談ください。
下記の3つの症状のうちいずれかがあれば、睡眠時無呼吸症候群が疑われます。
- いびきがうるさい
- 日中の眠気がある
- 朝起きると体が重い
症状としてはほかに、次のようなものがあります。
- 倦怠感
- 熟睡感が無い
- 起床時の頭痛
- ED(勃起不全)
- 夜中に何回もトイレに行く
- 集中力や記憶力の低下
睡眠時無呼吸症候群の放置は禁物
睡眠時無呼吸症候群をきちんと治療しないで放置すると、交通事故や各種疾患(高血圧、糖尿病、不整脈等の心疾患、脳卒中)などを招く確率が大幅に上昇します。
職業や家事などの私生活にも何かと悪影響が出がちですので、何も手を打たずにおくことは禁物です。
睡眠パートナーから、睡眠中の大きないびきや呼吸の一時的停止を指摘されたことは無いでしょうか。もしあるとしたら、睡眠時無呼吸症候群が疑われますので、この疾患に詳しい医師を受診しましょう。
睡眠時無呼吸症候群の簡易検査
前記のような症状に心当たりのある患者様には、睡眠時無呼吸症候群の「簡易検査」をお勧めしております。お貸し出しした専用機器を使って、ご自宅で検査を行っていただき、当院でデータを解析いたします。睡眠時無呼吸症候群の診断、および症状の程度を測定するための検査です。
口と鼻に呼吸センサーを、指に血中酸素濃度を調べるセンサーを取り付けて一晩ご就寝いただき、時間当たりに10秒以上の無呼吸・低呼吸が何回生じるか、また同時に血中酸素濃度の低下が起こっているかどうかを調べます。
睡眠時無呼吸症候群の治療法
治療法は、睡眠時無呼吸症候群を招いている原因、また患者様個々の状態に応じて、下記のような方法のなかから選択されます。
CPAP療法
CPAP療法(Continuous Positive Airway Pressure=経鼻的持続陽圧呼吸療法、通称シーパップ)とは、鼻に装着したマスクから圧力を加えた空気を送り込むことによって、ある一定の圧力を気道にかけ、気道の閉塞を取り除いて無呼吸を防ぐ治療法です。中等症から重症の患者様にとても効果的で、ほとんどの患者様で、この治療を行ったその日からいびきをかかなくなり、朝もすっきりと目覚め、昼間の眠気も軽くなります。
今や睡眠時無呼吸症候群の最も重要な治療法として、欧米や日本で広く普及しています。
マウスピース
就寝中の顎の位置を少し変えるだけで改善が見込めるような軽症レベルの患者様が適応になります。
気道を広く確保するために、下顎を上顎よりも前に出るように固定します。
専用のマウスピースですので、作製する際には専門の歯科医をご紹介いたします。
生活習慣の改善
- 肥満の方は、減量のために食事を腹八分目に抑え、適度な運動も心掛けます。
- 寝酒はやめましょう。お酒は筋肉を弛緩させるため、気道の閉塞をさらに悪化させる可能性があるからです。
- 睡眠薬のなかには筋弛緩作用を有するタイプのものがありますので、服用にあたっては主治医にご相談ください。
外科手術
気道の塞がってしまう部位(アデノイドや扁桃肥大など)を、外科的に正常な状態に戻す治療が行われることもあります。
在宅酸素療法
在宅酸素療法とは、病状は安定しているものの血液中の酸素が不足している方が、ご自宅などの医療機関以外の場所で、不足している酸素を吸入する治療法です。自宅に「酸素供給機」を設置し、必要時あるいは24時間にわたり、酸素吸入をします。
酸素不足による症状
酸素は肺や心臓をはじめ、あらゆる臓器の働きに関与しています。
肺・心臓・肝臓・腎臓など、体の中の臓器が働くためには、エネルギーが必要です。私たちは、食べ物を酸素で燃やすことによってエネルギーを作り出し、生命活動を維持しています。酸素はエネルギーの産生、生命の維持に不可欠なのです。したがって酸素が不足すると、下記のような症状が現れてきます。
- 胃腸の働きが悪くなる
- 眠れない
- 動悸・息切れがする
- 疲れやすい
- 体がむくむ
- イライラする など
酸素が取り込めなくなる病気
酸素は、呼吸によって体内に取り込まれます。したがって呼吸機能がうまく働かないと、体の中に酸素を十分に取り込めなくなってしまいます。
このような状態を呼吸不全と呼び、病状が1ヶ月以上に及ぶ場合を慢性呼吸不全と言います。慢性呼吸不全を引き起こす主な呼吸器の病気には、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や肺結核後遺症、間質性肺炎、肺がんなどがあります。
在宅酸素療法で酸素不足を改善
慢性呼吸不全が進行すると、呼吸困難によって日常生活に大きな支障をきたすようになります。また血液中の酸素が不足したままの状態が長引くと、肺以外の臓器に負荷がかかり、高血圧や心不全、脳卒中、狭心症、急性心筋梗塞などの合併症を引き起こす危険が出てきます。
そこで、慢性呼吸不全の原因となった病気の治療と同時に、在宅酸素療法(HOT:Home Oxygen Therapy)によって酸素の足りない状態を改善します。在宅酸素療法を行っている患者さんの内訳としては、COPDが45%、間質性肺炎・塵肺等が18%、肺結核後遺症が12%程度と、ほとんどを呼吸器疾患が占めています。
息切れなどを改善してQOLを高める
在宅酸素療法は、息切れなどの自覚症状を改善し、慢性呼吸不全患者の生命予後の改善などに役立ちます。また家庭での酸素投与によって在宅療養や社会復帰を可能にし、生活の質(QOL)を高めます。酸素吸入により心臓をはじめとする諸臓器を低酸素状態から守り、寿命を延ばす効果も実証されています。
現在、全国で10万人以上の方が、ご自宅で酸素吸入をしています。
在宅酸素療法には健康保険が適用されます
下記の条件を満たした場合、在宅酸素療法には健康保険が適用されます。受診時に、窓口で自己負担分をお支払いください。
対象疾患
- 高度慢性呼吸不全例
- 肺高血圧症
- 慢性心不全の対象患者
- チアノーゼ型先天性心疾患