当院の乳腺外来について
すべて女性スタッフが担当し、乳癌検診および乳房に関する基本的な診療をいたします。乳癌検診を受けたい方、乳房にしこりがある、乳頭から血性の分泌物が出る、乳房の皮膚にくぼみやひきつれがある、など乳房に気になる症状がある方は受診してください。当院ではデジタルマンモグラフィと超音波検査を併用した検査を行います。必要に応じて、穿刺吸引細胞診や針生検(病理組織検査)も実施します。
また、術後患者様の外来化学療法や内分泌療法も実施しております。
当院は日本乳がん検診制度管理中央機構よりマンモグラフィ検診施設として画像認定を受けています。
主な乳腺疾患について
乳がん
乳腺は、分泌物を産生する部分である「小葉」と、分泌物を運ぶ「乳管」から成っています。これらの組織から発生する悪性腫瘍が乳がんです。癌細胞が小葉や乳管に留まっているものを「非浸潤癌」、小葉や乳管をこえて浸潤しているものを「浸潤癌」と分類します。しこりを触れにくい癌(非触知乳癌)もあるため、発見には画像検査が重要です。乳管から発生した浸潤癌は「硬癌」、「乳頭腺管癌」、「充実腺管癌」の通常型と、「粘液癌」、「浸潤性小葉癌」などの特殊型とに分類されます。乳がんが疑われた場合には病理組織学的診断が不可欠なため、専門医療機関へご紹介いたします。
線維線腫
20~30代の女性に好発する乳房のしこりです。線維線種は良性腫瘍として分類されることが多いですが、実際には正常な細胞が過剰に増えてできた過形成と考えられています。通常、治療の必要はなく、1年に1回の経過観察となります。病変が大きく、葉状腫瘍との鑑別が必要な場合には、針生検による病理組織学的診断が行われます。
嚢胞
後述する乳腺症により乳管の中の細胞が増え、乳管が詰まって水たまりができた状態です。通常、治療の必要はなく、1年に1回の経過観察となります。
乳腺症
乳がん検診で「乳腺症」といわれたことがある方も多いと思います。乳腺症は単一の病変から成る疾患ではなく、女性ホルモンの影響を受け、乳腺組織に増生、化生、退行などの変化が起こった状態です。乳房の痛み、張り、硬さ、などの症状がみられたり、超音波検査で乳管拡張、嚢胞などの所見がみられることがありますが、組織学的には正常な構造が保たれています。
乳腺炎
授乳中に起こりやすく、乳房が腫れたり、発熱したりすることがあります。授乳中の乳腺炎は基本的に乳汁のうっ滞(つまり)によるものであり、まずはかかりつけの産婦人科や母乳外来の受診をおすすめします。
乳がん検診
乳がん検診の方法には、視触診、マンモグラフィ、超音波検査などがあります。それぞれについて、乳癌学会診療ガイドライン2013年度版(以下、ガイドライン)に基づいて説明します。
マンモグラフィ
マンモグラフィは乳房専用のX線撮影で、乳房をプラスチック製の圧迫板で挟み、斜め方向(MLO)と上下方向(CC)の2方向を撮影します。マンモグラフィは、しこりとして触れない乳癌(非触知乳癌)や、しこりになる前の石灰化した微細な乳癌を検出することができ、乳癌の早期発見に欠かせない検査です。乳癌検診において、マンモグラフィは死亡率低減効果が確認された有効な検診法です(50歳代で推奨グレードB、40歳代で推奨グレードB)。日本においては、40歳代後半が乳癌罹患率のピークであるため、マンモグラフィの有用性は高いと考えられます。マンモグラフィによる乳癌の検出率は乳房濃度の上昇に伴って低下することが知られており、マンモグラフィで高濃度乳房とされる方は、超音波検査の併用が有用です。
マンモグラフィの被爆について
マンモグラフィにおける被爆のリスクについては、40歳以上であれば利益がリスクを大幅に上回ると考えられています。日本における検診マンモグラフィの乳腺の吸収線量は最大3mGy,平均2mGyです。実効線量は、放射線加重係数1.0と組織加重係数0.12を乗じて計算され、2.0mGy×1.0×0.12=0.24mSvとなります。
(参考)
1回のマンモグラフィでの被爆(実効線量) | 0.24mSv |
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自然放射線による被爆(1人当たり、年間) | 2mSv |
超音波検査(エコー検査)
乳房に探触子(プローベ)を当てて超音波を発信し、乳房内部から返ってくる反射波(エコー)を画像化して診断する検査法です。超音波検査は視触診やマンモグラフィで検出できない乳癌が検出可能であり、高濃度乳房や若年者に対するマンモグラフィ検診の補助手段として活用されたり、乳房腫瘤性病変の良悪性を鑑別する手法として推奨されています(推奨グレードB)。超音波検査を追加すると多くの良性病変が検出されやすくなり、要精検率(要精密検査となる確率)が高くなるという不利益についても覚えておく必要があります。
超音波検査による乳癌検診が有効であるという根拠は現時点では示されていませんが、現在、国内において乳癌検診での超音波検査併用についての大規模臨床試験(J-START)が実施され、有効性の検証がすすめられています。
乳がん検診における視触診の位置付け
ガイドラインには「視触診の死亡率低減効果は否定できないが、現在までに視触診単独検診の有効性を示した質の高い研究はなかった」と記載されており、視触診が画像による検診を効果の面で上回ることはないと考えられています。
乳がん検診、乳腺の検査についての注意事項
以下の項目に該当する方は、検査が受けられない場合があります。事前にお申し出ください。
- 妊娠中、授乳中、卒乳後間もない方
- ペースメーカーなどを挿入している方
- 豊胸手術をしている方
- 制汗パウダー・スプレーを使用している方(受診する日は使用しないでください)